何を商品化させるか
発酵の素晴らしさ、中でも麹や甘酒の魅力を伝える為に何が出来るかと来る日も来る日も考えていた時期がありました。よくもここまで麹の事を毎日考えているなと自分でも呆れるくらい麹の事で朝も夜も頭がいっぱいでした。その中で洋食のテーブルで世界中で出場率が高いもの、砂糖が沢山入っている調味料と絞り込んでいき「ケチャップ」を作るアイディアが浮かんだのです。そのアイディアが降ってきたのは2019年の2月。それまで8カ月ほど事業開始に向けて色々な試作を作っては失敗してを繰り返していたのが嘘のようにケチャップの試作は一発で自分が考えている方向性と重なり「これで行こう」とそれまでの迷いは綺麗に吹っ切れました。
発酵食マルシェのお声がけ
商品は決まったものの、もちろん私は食品の世界に足を踏み入れることは初めてです。作った商品をどこで売るのか、どうやって営業をするのかは手探りで始めるしかありません。そんな時発酵マイスターの資格をとった日本発酵文化協会からメールが届きます。内容は某デパートで【発酵食マルシェ】を行うので会員の中で商品を売りたい人がいるかという案内でした。その時大袈裟ですが運命を感じて心臓がどきどきしたのはご想像がつくでしょうか。【ここでやらなかったら一生やらない、これでデビューしろという事なんだ】と流れに身を任せることに決めました。数日後私は企画書と3種の試作ケチャップを持って理事長に打診に行きました。伝統の発酵食が並ぶマルシェの中、受け入れてもらえるのだろうか、ド素人の自分でも出来るのだろうかという心配とはうらはらにコンセプトを気に入ってくださった理事長が応援してくださることとなり、このケチャップがデビューする催事が決定しました。催事の3か月前、19年の3月の事です。
綱渡りで果たしたデビュー
それからは大変です。全くやったことのない世界で無名でコネもなく、ノウハウもない。まだ会社も出来ていない
私を相手にしてくれるOEMの工場はそうそうありません。ようやく返答をくれた工場からはミニマムロットが合わない、レシピ保護の契約を結んでくれない、という状況が続く中で、ダミーのケチャップ瓶だけが催事告知の宣伝用にデパート側に渡されます。もう後戻りはできません。
そこでも実は日本発酵文化協会の方に救われたのです。
知り合いの方を紹介していただいたお陰でその方を介して工場が見つかったのです。あとは、レシピ固め、賞味期限気味、ブランディング、パッケージデザインと手探りながらにも周りの方のお力をお借りし一つ一つクリアし、なんとか6月の催事デビューを果たすことが出来ました。そうそう、そのパッケージデザインにもこだわりがあり、私が信頼するフランス時代からの友人でありこの道のプロに私の想いをぶつけて形にしてもらったものなのです。マルシェ自体はマイスターの勉強を一緒にした友人や長年の友達が毎日代わる代わるヘルプに入ってくれました。
令和1年5月には会社も設立し、晴れて正式に麹を洋食のテーブルへ進める事業というコンセプトでの事業が正式に立ち上がりました。こうして改めて振り返ると本当に様々な方々が絶妙なタイミングで手を差し伸べてくださったお陰で短期間で実現することが出来たんだなと感謝の気持ちでいっぱいになります。